患者は主治医を選べない。
一見選べそうで、実際には選べないものは世の中に結構あります。
そういう状況を風刺したCMがかつてありました。
機内食サービスで「Fish or Steak?」と聞かれ「Steak」と答えると、「fish only」と言われるCMです。
魚しかないなら「魚か肉」と聞かなければいいのに、一応選べるような聞き方をするわけです。
魚料理にするか、肉料理にするかぐらいなら、まだましです。
これが入院先の病院を選ぶとなると非常に大変です。
ましてや、いい主治医を選ぶことはほとんど不可能です。
まるで宝くじを買うようなものです。
運がよければ当たるし、運が悪ければ結果は悲惨です。
そのために紹介状があるではないか、と言われそうですが、必ずしも紹介状は絶対的なものではないようです。
実は私達も福大病院に入院する時、検査をしてもらったかかりつけの医師に紹介状を書いてもらいました。
書いてもらった相手は外科部長で、膵臓の権威ということでした。
実際にお会いしてみると、人当たりのいい、やさしそうな医師でした。
その時この先生なら安心と思いました。
ところが、いざ病室に行くとベッドには別の先生の名前が書かれていました。
それでも主治医は外科部長だから、名前が書かれている医師は主治医の指示で動く担当の医師だろうと思っていました。
実際、最初の回診には外科部長が来ました。しかし、そこまででした。
以後は一度も外科部長の顔を見ることもなく、外来に変わってからも外科部長に診てもらうことはありませんでした。
一体、紹介状は何だったのでしょうか。
その疑問はずっと解けず、後になって紹介状を書いてくれた医師にもその疑問をぶつけてみましたが、彼もおかしいですね、というばかりで結局いまに至るまで分からずじまいです。
まったく不運としか言いようがありません。
もし、紹介状通りの外科部長が担当してくれていたら、私達はM医師の精神的ないじめに遭うこともなく、その後、病院を替えなくても済んだのです。
それにしても何の説明もなく、紹介状とは別の医師を主治医にした病院の態度には不信感を覚えます。