2006/12/22

藁にもすがる気持ちを利用する商売も

 気功で本当にガンが治るのでしょうか。
ある人は治ると言いますし、効いたという人もいます。
私には分かりません。
でも、効くかもしれないものを捨てるわけにはいきません。

 長崎まで行けなくなったので今度は向こうから来てもらうことにしました。
治療に行けば1万円で済みますが、来てもらうとそうはいきません。
実際、アシスタントのような女性から「こちらにお見えになる時は1万円でいいのですが、そちらまで行くとなると1日がかりになりますから、その辺りのことは考えて下さいね」と要求されました。
もちろん交通費もかかりますから、その辺は考慮しなければと思っていましたが、果たしていくらがいいのか。

 尋ねてもいくらという返事はなく、5万円の人もいれば10万円の人もいます、と言われました。
この幅がミソです。じゃあ5万円にしようとはならない。
 コース料理が松竹梅とあれば常に最も高い「松」を頼む人もいますが、私などは大体「竹」か「梅」です。
日本人は中庸を好む、ではありませんが、やはり真ん中の「竹」を頼む人が多いのではないでしょうか。

 ともあれ、そう言われて私は6万円にしようと思いました。
だが、治療が終わった後、妻は私に「7万円渡して」と言いました。
たしかに端で見ていても一生懸命に気を送ってくれているのが分かりましたし、「いい方向に進んでいますよ」という言葉に一筋の光明を感じもしましたから、私も妻に同意し7万円を渡しました。

 藁にもすがる気持ちーー。
気功でガンが縮小しているといわれれば、ついその言葉を信じてしまいます。
ただ、気を当ててもらった後、妻は元気になるどころか疲れてすぐ寝込んでしまいます。
それでも痛みが激しいと電話をして、遠隔治療をしてもらっていました。

 実は私はこの遠隔治療に疑問を感じていました。
気の存在は疑っていません。
昔から「手当て」というように、手を当てることで病を治していたのです。
それは「気」を当てていたということで、まさに気功の場合は手を患部にかざし「気」を送っていくわけです。
しかし、「電話で気を送る」という言い方には疑問を感じてしまいます。

 妻が罹病してから宗教とも気功集団ともつかぬ変な会合に参加したことがあります。
実技試験に参加するので、そのモデルになって欲しいと頼まれ参加したのです。
そこで見たのは一種の集団催眠のような儀式でした。
「○×の神様お願いします。このジュースのあ~じ変われ!」と、まるで漫画のようなおまじないを教祖(?)が唱え、呪文を唱える前と唱えた後でジュースを飲み比べて、味が変わったというのです。

 私をその集会に連れて行った友達は、ちょっと段階を踏めば誰でも空に浮かぶ雲を念じて移動させたり、雲の形を変えたりできると言いましたが、私の前でやった時は何も変わりませんでした。
変わるわけがありません。ただし、上空に風がある時は非常に短時間で形を変えていきます。
そういう時を狙って、実行させ信じさせているわけですから、これはまやかしです。

 その時のモデルというのは友達が手をかざし、私の体の欠陥を探し、次にはそれを治すというものです。
大抵モデルになった人は1回目の「治療」で「痛みが消えた」と言います。
まだの人は2回目の治療を受けるわけで、この段階でほぼ全員が「痛みが消えた」と言います。
それでもまだよくならない人は3回目を受けるわけですが、私を含め3回まで残った人は5人ほどでした。
結果は3回目も変わらなかったのですが、友達に気の毒になり、痛みが消えたと言いました。

 この集団で「不思議な力」を身に着けるには70万円程いるそうです。
逆に言えば、70万円払えば誰でもその力を身に着けることができるわけです。
その一事からしてもちょっと信用できません。
 これと気功が同じとは言いませんが、病人の藁にもすがる気持ちをうまく利用した商売が健康食品を含めいかに多いことか。