2006/11/06

モルヒネと緩和医療

 ガン患者にとって最大の敵は痛みです。
痛みさえコントロールできれば随分楽になります。
いわゆるクオリティライフがおくれます。
痛みをコントロールするのはペインクリニックと呼ばれ、最近ではかなりその地位が上がってきましたが、以前は麻酔科と呼ばれ、外科医の下、付随的なものと見られてきました。
その傾向は現在でもそれ程変わりません。

 そのため患者にとっては生活する上で最も重要なウェイトを占めるにも関わらず、痛みのコントロールは軽んじられてきたのが非常に残念です。
また、一部ではモルヒネに対する古いイメージ、いわゆる常習性の問題です、があり、医師からもきちんと説明されないため、不安の中で服用しているという部分もありそうです。

 妻も当初、モルヒネの量が増えるのを嫌い、少し調子がよければ服用する時間を伸ばすなど自分で多少調整していました。
特に気功治療を併用するようになってからはそうです。
気功の先生が「できればモルヒネの服用は止めて下さい。治りが遅くなりますから」と言われたこともあり、できるだけモルヒネの服用を我慢するようになりました。
 でも、その結果、ベッドから起き上がれなくなり、鈍痛のような痛みに悩まされ続けたのです。

 私も、我慢できるのならモルヒネの量は減らした方がいいだろうという考えには賛成でした。
 しかし、飲まないことで痛みが増し、苦しむのなら、飲んだ方がいい、痛みさえ緩和されれば日常生活ができるのだからと、無理に我慢せずモルヒネを飲むよう勧めました。
 それと同時に、いかに最近モルヒネが進歩し、緩和医療に貢献しているかという新聞記事も見せました。
客観的資料を見せることにより、薬に対する不安感を取り去ろうとしたのです。

 ガン患者にとって痛みの緩和が最大の治療だと思います。
痛みさえなければかなりの部分、日常生活が送れるからです。
私は妻が膵臓ガンと分かった時、最初にしたことはインターネットで治療法を調べたことです。

 調べれば調べるほど、結果は希望を無惨に打ち砕くものでした。
膵臓以外は治ったという報告例が数多くあるのに、膵臓だけなかったのです。
 AHCC首都圏普及会にもメールで問い合わせましたが、結果は「残念ながら」というものでした。生存期間が短いので症例が取りにくいからで、効かないということではないというのがせめてもの慰めの言葉でした。
 昨年1年間は本当に仕事どころではありませんでした。
もしかすると本人以上に私の方がうろたえ、落ち込んでいたかも分かりません。

 モルヒネの中でもMSコンチンは常習性などの副作用が比較的少ない、いい薬であり、なにはともあれ痛みを緩和しよう。痛い、痛いと言っていては治る病気も治らないからと言い聞かせ、本人も「この痛みさえなければ、どんなに楽か」と、モルヒネをきちんと飲むようになりました。